汽水域(エスチュアリー)とは河口域のことです。汽水域の特徴は半閉鎖的な環境を持ち、外洋と自由な接点を持つこと、海水が河川からの淡水で希釈されていること、潮汐の影響で一日に二回海水が流入する動的生態系であること、塩分濃度が0.5~35psuの範囲であることです。
psuとは実用塩分のことで、電気伝導度によって決まる値です。
汽水域では一日のうちでも塩分濃度が変化するため生物が生息するには厳しい環境です。だからその生態学的な特性は種の多様性が低いといえます。しかし、河川から大量の栄養塩が送られてくるため膨大な現存量の生物が存在しています。
一口に汽水域とは言ってもその塩分濃度、混合の状態によって分類されています。塩分濃度による分類は下の表のようになっています。
分類 | 塩分濃度 | |
---|---|---|
陸水(淡水) | <0.5psu | |
低塩分 | 0.5~5psu | 混合塩分領域 |
中間塩分 | 5~18psu | |
多塩分 | 18~30psu | |
高塩分 | 30~40psu | |
超高塩分 | 40psu< |
混合状態による分類は大きく分けて正のエスチュアリー、負のエスチュアリー、中立のエスチュアリーの三つに分かれます。図を用いて表すと下のようになります。
1.正のエスチュアリー
淡水流入量 > 蒸発量 となったときに形成されます。蒸発量が少なめなので温帯で見られます。正のエスチュアリーは、さらに強成層型、フィヨルド型、緩混合型、均質型に分けられます。
2.負のエスチュアリー
淡水流入量 < 蒸発量 となったときに形成されます。蒸発量が多く熱帯で見られます。
3.中立のエスチュアリー
淡水流入量 = 蒸発量 となったときに形成されます。つりあうことはまれなのでほとんど見られることはありません。