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魚と川

川に棲む魚とはいえ様々な種類の魚がいます。一生を川で過ごす魚もいれば、一生のうちほとんどを海で過ごし一時期だけ川に帰ってくる魚もいます。それらの魚の分類から始めましょう。下の表を見てください。

分類 性質 代表的な種名
純淡水魚 一次的淡水魚 海水では生きられない。 コイ,ナマズ,ドジョウ
二次的淡水魚 短期間のみ海水で生きられる。 メダカ,カダヤシ,チラピア
陸封性淡水魚 昔回遊していたが現在は湖などに住み着いた。 カワヨシノボリ,ハナカジカ,エゾトヨミ
通し回遊魚 降河回遊魚 生活の大部分は淡水で産卵は海で行う。 ウナギ,ヤマノカミ,カマキリ
遡河
回遊魚
Ⅰ型 産卵時期に川を上り孵化後すぐ海に戻る。 シシャモ,ワカサギ,シロウオ
Ⅱ型 産卵時期に川を上り孵化後しばらく淡水で過ごす。 シロサケ,カラフトマス,イトヨ
Ⅲ型 産卵時期以前に川を上り孵化後しばらく淡水で過ごす。 アメマス,サクラマス,マルタウグイ
両側回遊魚 産卵とは無関係に川を上る。 アユ,ヨシノボリ,エゾハナカジカ

このように分類されています。大きく分けると純淡水魚という淡水で生活する魚と通し回遊魚という川と海を行き来する魚に分けられます。

これらの魚も河川の環境が悪いと生息することができません。魚が生息できない川の条件とは
1.水のない川
2.水質の悪い川
3.増水時に避難する場所がない川
4.餌のない川
5.天敵に占拠された川
6.産卵場がない川
の六点です。1の水のない川を川と呼ぶのかと思う方もいるかと思いますが、途中で地下水流に変わってしまう川など一部でも水がなくなってしまう川をさしています。2の水質の悪い川は酸性の河川など魚が生息することができない環境を持った川も存在しています。

3の避難場がない川はコンクリートで三面張りにされた川がそうです。これは人の生活環境に洪水を起こさないためにとられた方法ですが、このような川には淵と呼ばれる淀みがないため魚は生息することができません。4,5,6は餌がなければ生きられませんし、天敵ばかりでは生きていけません、産卵場がなければ繁殖できないので安全な場所を探すためその川には生息しなくなります。

現在、川に魚を戻そうとできるだけ元の自然環境に近い環境を人工的に作ろうと多自然型工法という方法をとられている場合もあります。そのような工事には上で挙げたような生息できない川の条件を満たさないように設計していく必要があります。その対策としては
1.流量確保
2.水質診断
3.瀬と淵、岸辺植生の形成
4.比較的大粒径の河床礫
5.人間と鳥からの保護
6.回遊路の確保
が挙げられます。4の河床に礫を用いるというのは岸辺の植生が繁殖しやすい環境を作るためです。5の人と鳥からの保護は現在の川に棲む魚の天敵が人と鳥だからです。乱獲をするのも人間ですし河川環境を悪化させるのも主に人間がやっていることです。6の回遊路とは魚道のことです。すでに三面張りの河川ができている場合、遡上できないような落差がある場所があります。そのような場所には迂回路として魚道を作り産卵場に行き着けるようにします。

水質診断法としてはAOD(Aquatic Organisms Environment Diagnostics)があります。これはその河川の水を採取してきてその水で48時間アカヒレを飼います。原液(100%)のままでアカヒレが半分以上生き残っていれば濃縮して180%にして同様のことをします。まだ半分以上生き残っていれば320%、560%、1000%と徐々に濃くしていきます。そしてアカヒレがちょうど半分死んでしまう濃度を48(h)-LC50として、この値を見てその水質を判断します。

AODは48(h)-LC50の値が大きくなるほど濃縮してもきれいということできれいな水と判断できます。値が小さいほど魚が生息できないような水だと判断できます。普通の魚であればAOD>400%で生息が可能です。しかし、アユのようなきれいな水でしか生きられないような生物は700%以上の水質が必要となります。


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