ここでは、(1)温度や水蒸気量などが異なった空気を混合したとき(2)空気と同じ湿球温度の水を吹きこんだとき(3)空調機を通った空気が部屋に噴き出されたとき、どのような空気が出来上がるのかををみていきます。
(1)空気を混合したとき
この状況がよくイメージできないと思うので、下に図をいれます。
1と2の空気が入ってきて3の空気が出て行く状況です。これだけでは話が進まないので、空気量を $G$ [kg'/h]、温度を $t$ [℃]、絶対湿度を $x$ [kg/kg']、エンタルピーを $h$ [kcal/kg']として、1,2,3の添え字をつけて区別することにします。単位の kg' は乾き空気の重さです。覚えてますか?空気線図上に1,2,3の点を取ると下のようになります。
グラフを見てわかるように1と2の間を $1-k$ と $k$ に分けられる点が3になります。$k$ は混合比といって
ここで、温度、絶対湿度、エンタルピーそれぞれの関係をまとめると
(2)空気と同じ湿球温度の水を吹きこんだとき
まずは図を見てみましょう。下の図のように左から来た空気に湿球温度に等しい水が噴霧される状況を考えます。
このときの状態を、(1)と同じように文字でおきます。ここでは、気温 $t$ [℃]、湿球温度 $t'$ [℃] 、絶対湿度 $x$ [kg/kg']をおいていきます。すると、湿球温度が $t'_1$ の空気に $t'_1$ の水が噴霧されると、出来上がる空気2は湿球温度 $t'_1$ と等しいはずです。それを踏まえた上で空気線図を描くと下のようになります。
湿球温度の線と、エンタルピーの線はほぼ平行なので $h_1 \simeq h_2$ となっています。この図からわかることは、エンタルピーを維持したまま左上に移動しているということです。(見たままですね…)これが何を意味しているのかというと、空気線図(1)の水平変化と垂直変化を思い出してください。左に行くということは顕熱の減少を、上にいくということは潜熱の増加を意味しています。つまり、ここでの変化は顕熱を潜熱に置き換える変化に他ならないのです。
どうですか?空気線図の見方が少しわかってきましたか?では次にいきましょう。
(3)空調機を通った空気が部屋に噴き出されたとき
ここでは、空気線図の中で初めて使うものが出てきます。それは、顕熱比(SHF)です。顕熱比はkinの知る限りではここでしか使いません。空調機から空気が出てくるときは顕熱比を使うと覚えておいてもいいんじゃないでしょうか?(^^)
状況設定から確認しましょう。ここでは、空調機を抜けた空気1が吹出し口から部屋の空気2に向かって吹出される状況を考えます。実務では、部屋の室内環境を設定してから設計を始めるので、1の空気の状態を知るために顕熱比を使います。
では、まず文字をおいていきましょう。といいたいのですが、ここでは空気1、2に対して文字を置くことはしません。上で述べたように、2の状態がわかっています。だから、この部屋の取得熱量、つまりこの部屋にどれだけの熱が供給されているのかもわかっていることになります。これがわかっていれば、この部屋が必要とする顕熱 $q_S$ と潜熱 $q_L$ がわかっていることになります。 $q_S$ と $q_L$ が求まっている状態がここのスタートになります。 $q_S$ と $q_L$ の求め方は負荷計算で行います。
まず、目標であるグラフがどんなものか見てみましょう。グラフを見た上で、どのように描いていけばいいのかを説明していきます。では、グラフを見てください。
このグラフを見たとき、顕熱比と顕熱比線と原点という今まではなかった線、点が描かれています。原点は空気線図に元から描かれている点です。まずすることは、すでにわかっている顕熱と潜熱から顕熱比(SHF)を求めることです。顕熱比は字の通り顕熱の割合なので
顕熱比が求まれば左の縦軸に点をとり、それと原点とを結びます。次に、2がわかっているので、顕熱比線と平行に2を通る線を引きます。この線上に、吹出し空気がのることになります。では、この線上のどこにのるのかというと、相対湿度90%の位置が1になります。これは、吹出し空気が相対湿度90%で設計されるからです。これでこの項目は終了です。
全くふれなかった3は、空調機内の冷却コイルの平均表面温度にあたる点です。室外機から水が出てくるのはみなさんご存知だと思います。水が出てくるのは、空調機の冷却コイルで空気が露点以下に冷やされるからです。つまり、冷却コイルを通過したばかりの空気は相対湿度100%で、そのときに発生した露が室外機のところで排出されるということです。